『ふるさと回帰支援センター』に聞く!withコロナの移住状況 後編

※この記事は、2023年2月時点のものです。

 

東京・有楽町の交通会館で全国の移住相談に対応している『NPO法人ふるさと回帰支援センター』。44都道府県1政令市の相談員が常駐し、地域の暮らしに関する情報発信を行っています。後編では前編での内容をふまえ、西日本エリア担当の早田さん、広域エリア担当の中西さん、徳島県移住コンシェルジュの村社さんの3人にQ&A形式で近年の移住動向について伺っていきます。

★NPO法人ふるさと回帰支援センターについてはコチラ!

https://www.furusatokaiki.net/

 

Q 『ふるさと回帰支援センター』での徳島県の取り組みを教えてください。

▲(写真右)徳島県専属相談員 村社 いちご (むらこそ いちご)さん

 

村社さん:『ふるさと回帰支援センター』内にある徳島県ブースでは、徳島への移住を検討されている方の移住相談、自治体と連携したセミナーの開催、その他情報発信を行っています。

徳島県ブースに相談に来られる方は、「なんとなく徳島県に関心はあるけれど、徳島のことはあまり知らない」という相談が多いように感じます。最終的に各市町村の移住窓口へお繋ぎすることを目指していますが、Uターンなどで移住先を徳島県に限定されている方は『ふるさと回帰支援センター』と県が共催する徳島県単独の移住相談会『とくしま回帰セミナー』をおすすめしています。徳島県内の自治体の方と直接話をしていただく相談会スタイルで、オンラインと現地開催のハイブリット形式で行っており、各市町村の方にお話を聞けるので相談者さんの満足度も高く、好評です。

とくしま回帰セミナーの様子。

Q.「なんとなく徳島県に関心はあるけれど、徳島のことはあまり知らない」という人は、どういうきっかけで徳島に興味を持つのでしょうか?

村社さん:「以前、旅行で徳島を訪れたことがあり、良い印象を持っている」、「お遍路を回ったことがある」など、観光きっかけで興味を持ってくださる方が多い印象です。移住のパターンとして個人的に「多い」と感じるのは奥様が徳島出身という、いわゆる「嫁ターン」の方。そのご縁で旦那様が「徳島の暮らしや仕事について知りたい」と相談に来られるケースもあります。「祖父母の家が徳島にある」など何かしら徳島と縁があり、「深くは知らないけど移住先の候補として考えている」という人の相談が多いように感じています。

 

Q. 『ふるさと回帰支援センター』の統計によると、男女比でいえば女性の相談件数が増えているようですが、徳島県単体ではいかがでしょうか?

村社さん:男女比にあまり差はないですね。ただ、先ほどもお答えしたように特徴的だと感じているのが、「嫁ターン」です。

 

▲徳島県の相談ブース

Q. 5~6年前はUターンの割合が6割程度だったのが、最近はIターンの方が多くなっています。その理由はどういったことが考えられるでしょうか?

 

早田さん:移住という選択が特別ではなくなってきたのではないかと思います。いわば、「普通に移住を考える」という時代になったのではないかと。国の施策として地域創生を打ち出しているということもあり、「地域に貢献をしたい」、「地域のコミュニティと関わりたい」といったような地方に関心を持つ人が増えています。

少し前までは「地方で田舎暮らし」というと「農業や林業など一次産業に就きたい」、「野菜やお米も作りたい、自給自足したい」など、自然の中で暮らしたい人が移住の主なターゲットだったと思いますが、今は地方の中でも比較的街の方に住みたいという人の相談も。「一度移り住んだら東京ヘは戻れない」という一大決心をして挑むというより、「移住もいいかも」くらいの感覚が日本全国に広まりつつあるように感じています。

Q. 「漠然相談」の人に徳島に興味を持ってもらうためには、どのようなアプローチが必要でしょうか。

「ふるさと回帰フェア2022」の様子。漠然と地方移住について考え始めた人の来場も多い。

中西さん:漠然相談は相談者が自分自身の考えを整理できていない状態であることも多いため、まずはその方が「どういった暮らしを求めているか」をお訊きしています。例えば生活環境、自然環境、趣味、仕事、物件の希望など移住先を選ぶ上での軸や優先順位などを明確にしていく中で、その条件にあった地域をご紹介させていただきます。その結果が徳島県であれば、徳島県をおすすめするのですが、人それぞれに異なりますのでその方が大事にされたい部分に合わせて、一人一人にあった提案をさせていただいています。

その上で全国から多数の自治体が参加する「ふるさと回帰フェア」への参加もおすすめしています。移住先に迷っている方にとって、各自治体の担当者に直接話が聞けるいい機会。実際に話してみると、「この地域の人は親切に教えてくれた」とか「ちょうど希望する物件があった」など、思いがけない出会いから移住を決めたという人も。移住先を探している人は積極的に行動し、情報を集めていますので、こまめな情報発信も徳島に興味をもってもらうのに有効だと思います。

 

★お知らせ

ふるさと回帰支援センターではウェブマガジン「ふるさと」で徳島県の情報を発信しています!
徳島県への移住に関心のある人はぜひご覧ください。

https://www.furusato-web.jp/

 

『ふるさと回帰支援センター』に聞く!withコロナの移住状況 前編

※この記事は、2023年2月時点のものです。

 

2019年12月頃から始まった新型コロナウイルス感染拡大。発生から3年余りが経ち、2023年2月現在、屋外でのマスクの着用も緩和され、5月8日からは季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げることが決まりました。

この間、地方移住も大きく変化。リモートワークが進み、転職することなく住む場所を選べる時代に。ワーケーションやワーキングホリデイのような移住気分を味わえるプログラムも各地に増え、都市に住む人たちに限らず、移住への興味関心も高まっています。

そうした変化を身近に体感している『NPO法人ふるさと回帰支援センター』の相談員のみなさんにwithコロナの移住状況を踏まえ、この3年を振り返ってお話を伺いました。

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https://www.furusatokaiki.net/

(写真左から)お話をうかがった中西さん、村社さん、早田さん。

 

日本最大の移住相談窓口『ふるさと回帰支援センター』

お話を伺ったのは・・・
西日本担当部長 
早田比呂美 (わさだ ひろみ)さん

早田さん:『ふるさと回帰支援センター』は、田舎暮らしを希望する生活者の増加を受け、2002年に発足し、2022年11月で20周年を迎えました。

『ふるさと回帰支援センター』は有楽町の駅の前にある『東京交通会館』8階にあります。周辺には全国各地のアンテナショップなどもあり、地方に興味のある人が多く集う地域です。センターに来所いただきますと、徳島県ブースは入って右側、高知県のお隣に位置しています。今年度新たに東京都と千葉県がブースを出展され、この2つはブース出展+相談員を置いていただいておりますので、 相談員が配置されていない県は奈良県と沖縄県のみになりました。

『ふるさと回帰支援センター』のミッションは地域へ移住を希望する方たちと、受け入れする地域、この 2つを繋いで、各地へ移住希望者を送り込むこと。地方移住は移住者にとっても、受け入れ地域にとっても目的ではなく手段ですので、 双方が「良かった」と思えるマッチングを行ことができるよう、務めています。

  • 相談窓口業務

よりよいマッチングを行うための活動の1つとして、各地の情報提供を行う相談業務があります。以前はセンターに自由に出入りができるようにしていましたが、現在は予約制です。入口で手指のアルコール消毒、体温チェックなどをしていだたいて、安心して皆さんがご相談できるよう、対応しています。

移住相談の流れは、田舎暮らしを考える方から問い合わせをいただき、希望する自治体や欲しい情報などを伺った上で、自治体を紹介させていただきます。その後、移住セミナーやモニターツアーなどへ参加いただき、移住エリアを確定したら、仕事や住まいを探します。うまくマッチングしなかった場合は、またセンターで相談いただき、別の自治体を紹介します。
このようなことを繰り返して最終的に移住を決定する流れになっています。

  • セミナー・フェアの開催

各自治体のみなさまと共に、定期的な移住セミナーの開催も行っています。コロナ以前はセミナールームでのリアル開催がほとんどでしたが、コロナ下でオンライン開催に。最近ではオンラインとリアルとのミックス型も増えています。今後はまたリアル開催を再開する自治体も増えると思いますが、オンラインも継続していくものと思います。

『ふるさと回帰支援センター』では国内最大級の移住マッチングフェア「ふるさと回帰フェア」を年に一度開催しております。2022年度は東京国際フォーラムで開催し、18,169名にご来場いただきました。

 

移住相談に見る、コロナ下の地方移住の変化

下は、当センターでの移住相談者の傾向を項目ごとにまとめたものです(※認定NPO法人ふるさと回帰支援センター来場者アンケート2021【東京】から)

地方移住希望者のニーズ センター利用者の年代の推移(東京)2008-2021(暦年別) %

 

来場者の性別  2021年(n=10,900 ※単一回答)

 

■移住先選択の条件(優先順位(2016-2021) 2021年(n=6,105 ※複数回答)

 

リーマンショックの時には「消極的な移住」、東日本大震災では「疎開的な移住」 、地方創生の事業が本格的になった頃は「積極的な移住」と言われ、コロナ下はこれまで地方移住を漠然と考えていた人たちが積極的に動き始めている状況です。

■希望する就労形態(2016-2021) 2021年(n=6,939 ※複数回答)

仕事を持ったまま地方で暮らす「リモートワーク移住」が可能になったことで、テレワークを基本としながら月に数回程度、東京の会社に通うといったような「二拠点居住」を行う人も増え、移住というより、引っ越し感覚で首都圏近郊に移り住む人も増加。そうしたことから2020年の移住の希望地ランキングに東京近辺の地域が上がってきていました。2021年に入り、この傾向は全国へと広がっています。

地方移住の関心は依然高まっており、 この追い風をしっかりと受け止めるためにも「地域の受け皿作り」が重要になってきていると思います。

 

リモートワーク移住で中四国にも移住者が増える!?「漠然相談」も増加中

 

お話を伺ったのは・・・
山陽四国エリア相談員 
中西 沙織 (なかにし さおり)さん

 

中西さん:続いて、山陽四国エリアで移住先を検討されている方の傾向についてお話しいたします。『ふるさと回帰支援センター』では全国の移住相談を承っていますが、 「移住先を決めていない」という方のご相談も多く、当センターではそうした相談を「漠然相談」と呼んでいます。

パソコン1つあればどこでも仕事が出来るという「リモートワーク移住」の需要が全国的に増加していますが、「地方移住には関心があるけれど、どこでも仕事が出来るので地域を決めきれない」という相談が目立つようになりました。

どうやって地域を絞り込んでいったらいいのか、何を基準に決めていったらいいかといった、移住に関する情報提供という枠を超えた、複合的な相談の必要性が窓口でも求められるようになってきたと感じています。

 

後編へ続く…

こうしたコロナ下の移住の傾向を踏まえ、後編ではQ&A方式で近年の移住動向についてさらにお話を伺います。こちらもぜひご覧ください。